売却でも物納申請&つなぎ資金に延納…相続税納税戦略?!
相続税を土地売却で払うとしても、資金繰りがうまくいかない。延納を使えますか。売れなかったらどうしょう。取り敢えず物納申請?。
納税戦略は一変
平成4年…「相続税」の『物納』申請は、12,778件でした。その後は減り続ける一方で、平成14年が5,708件、平成18年は1,038件です。平成19年は383件件です。
都市部では…土地の価格が高騰して、「路線価」より高く売れるようになりました。売却が、有利になったからです。そして、更地による『物納』が、なくなっていきます。『物納』が急減したため、「相続税」の納税戦略は、変化します。
とりあえず物納申請
地価下落時代は、僅かの失敗でも《相続税破産》につながります。そこで、《売却の見込み》があっても、万一に備えて「物納申請」という《保険》をかけます。
『物納』の手続きは、ゆっくりでOKなので、慌てる必要がありません。物納手続きと並行して、売却の交渉をします。
高く売れるなら、『物納』ではなく売却ですね。売却にする場合、「物納申請」は取り下げ、『延納』に変更します。そして、納税時期からの「延納の利子税(金利)」を払うことになります。
納税実務も一変
「相続税」の納税実務は…昭和バブルまではこのような《とりあえず物納申請》がトレンドでした。しかし、この実務も変化します。地価の高騰下落により、変わります。その後延納より物納ブームもありました。
しかし土地を売却して相続税を払おうとするのなら、つなぎ資金としての延納です。
昭和の時代、「相続税」の申告期間は、6ケ月(今は10ケ月)まででした。6ケ月間で、売却と納税までを実行するのは無理です。《つなぎ資金》が、必要でした。
この《つなぎ資金》に使われたのが、「相続税」の『延納』です。利子税(金利)を支払うことで、「相続税」を、最長20年間の分割払いにできるのです。『延納』は、《国による相続税ローン》‥と、いったところでしょうか。
とりあえず延納申請
『延納』は、正しく申請すれば、却下される心配などありません。『物納』と同様、慌てる必要がなく、手続きと並行して売却をすすめられます。
「相続税」の延納許可をもらっておいて、土地の売却代金で、一括納付するわけです。納付の際に、それまでの利子税(金利)を支払って、納税の終了です。
しかし…このような《昭和期の実務》には戻れないのが、実情のようです。
新実務は厳格
2006年4月1日の相続開始分からは法律が変わり、昔の延納とは変わっています。相続開始から申告までは、10ケ月です。
延納手続きは、審査に3ケ月(延長あり)と、定められました。また、税務署から不備訂正要求等があった場合は、20日以内に対応することになりました。《期限付》になったら、慌てる必要もありそうですね…。
実務は、厳しくなったのです。低利な《つなぎ資金》として、気楽には使えなくなったようです。
困難の証明
「相続税」を『延納』できるのは、《金銭納付困難とする金額》が、限度になります。以前は…〈子が医学部入学予定〉や〈自宅新築の資金が必要〉‥など相応の作文で、殆どが承認されたようです。
しかし、今では…《困難とする金額の明確化》が、厳正に、求められるようになりました。預貯金等のすべてを現金納付しなければならず、その後の不足額のみ、延納申請書に記載できるのです。
相続した財産でなく、納税者固有の財産である預貯金等の明細まで、審査されます。手元に残せるのは、生活費の3ケ月分等だけです。この「生活費」も、〈本人月額10万円+親族一人当たり月4.5万円+税金社会保険料等〉‥と、計算方法が定められました。
つなぎ資金の実務
〈すぐに売却するから〜〉‥とお願いしても、ダメです。建て前として、《売却してから延納》は、認められません。本来、『延納』とは《つなぎ資金》ではなく、《長期弁済の納税資金》ですから。
現在考えられる、「相続税」の《つなぎ資金》は…
(1)生活費のみ手元に残す本気の延納申請(2)却下覚悟で延納申請、却下なら延滞税(3)銀行等の金融機関でつなぎ資金を調達(4)申告だけして延滞、延滞税‥と、いったところでしょうか。
「利子税率」は、不動産が相続財産の75%以上の場合、3.6%(公定歩合に年4%を加算した割合が年7.3%に満たない場合には、特別な計算をします…公定歩合が0.1%なら3.0%)です。「延滞税率」は、2ケ月までは7.3%(公定歩合に年4%を加算した割合が年7.3%に満たない場合には、その割合。つまり0.1%なら4.1%)、3ケ月目からは14.6%になります。