金銭納付困難と生活費

相続税の延納も物納も、金銭納付困難が原則。その時の生活費は。  

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相続税の金銭納付困難とは…収入チェックと生活費の切り詰め覚悟?

延納申請も物納申請も、「金銭納付を困難とする理由書」によって、困難である事情についての説明が求められます。そのときはどのような生活レベルで金銭納付困難なのかが問われます。

現金納税が困難なとき…


2006年4月1日以降の相続分から「相続税」の『物納制度』が、大幅に改正されました。
「相続税」を現金で納付するのが困難である場合、『物納』が認められます。ただし、『物納』できるのは、「延納(最長20年間の分割納税)」してもなお、納付が困難とされる金額だけです。

書面チェックでOK?


物納申請の際は、「金銭納付を困難とする理由書」によって、《困難である事情》についての説明が求められます。
以前は、〈本当に金銭納付が困難か?〉‥を厳密には審査していなかったようです。《理由書》の筋書きが妥当であれば、殆どが許可されるようでした。
子の医学部進学や住居の建替え予定など、〈現金入用につき物納せざるを得ない〉‥といった理由が通ることも、多かったのでは…?
最近は、《理由書》の記載内容について、税務署が照会することもあるようです。書面ではなく、実情に対するチェックが始まったのでしょう。

固有の財産チェック!


『物納制度』の改正に伴って、「金銭納付を困難とする理由書」の書式も変化します。
従来、相続人固有の財産額は…《納税者固有の現金預貯金等》として、まとめて合計幾ら‥と、大まかに書けばOKでした。
しかし、改正後は…《現金・預貯金・換金の容易な財産(ゴルフ会員権や解約負担の少ない生命保険等)》に分けられ、明細欄まで用意されたのです。

書式と算式


《理由書》の書式と共に、納付金額の算式も明確化されました。
財産を相続したら…そのうち《換金できる金額》に《相続人固有の財産合計額》を加えて、『生活費』を差し引いた全ての金銭を、「相続税」として納めます。
相続債務と葬式費用等は、《換金できる金額》から、差し引くことができます。《相続人固有の財産合計額》から、『生活費』として差し引くことができるのは、3ケ月分です。相続人に事業がある場合は、原則として、事業経費の1ケ月分を差し引くことができます。
つまり、『生活費』だけを手元に残して、現預金の全てを「相続税」として金納するわけです。

基本的な生活?


『物納』で認められる金額は、「延納」によってでも納税できない金額です。毎月の収入から『生活費』は残せるものの、『生活費』を超えた分の金額は、「延納」の納税額に充当しなければなりません。その『生活費』にも、算式があります。
『生活費』として認められる、1ケ月の金額は…納税者(相続人)本人が10万円、配偶者その他親族は4万5000円です。この金額に、社会保険料や税金分が加わります。
教育費や住宅ローン等、特殊事情は考慮されます。ただし、その事情説明や資料が必要です。

要保護レベル!


この算式で計算すると、三人世帯の1ケ月分の基本生活費は、19万円(=10万円+4.5万円×2人)になります。この《19万円による生活》が、納税が完了するまで続くことになります。
生活保護制度は、健康で文化的な生活を維持するためにあり、扶助基準が定められています。仙台市のHPによると、同市の標準三人世帯の場合、165,078円の支給額になります。
国税庁の「金銭納付を困難とする理由書」は…〈物納するなら、生活保護に近い生活水準に切り詰めて相続税を払え〜〉‥と言っているようです。

一族郎党収入チェック!


《理由書》には、納税者本人だけでなく、配偶者その他親族の収入について記入する欄があります。
配偶者に収入がある場合、『生活費』をその収入で按分した結果、納税者本人が負担すべき分だけを留保できることになります。
例えば、前記19万円の『生活費』で、配偶者と本人の収入が同じ場合…『物納』するため、本人が手元に残せる生活費は、月額9万5000円(=19万円÷2人)です。
《理由書》は…〈1年以内に受給予定である退職金は、納税に充当しろ〜〉‥とも言っています。さすがに、〈配偶者の収入で相続税を払え〜〉とは、言いませんが。

覚悟の上の物納


《理由書》の主張…〈『生活費』は納税者本人の負担相応分を3ケ月分に限り残す〉‥は、相続税法施行令によって、明確に定められています。しかし、具体的な金額等については、法律上の明示がありません。税務署が、改正法..実際にどう運用するかが、今後の課題です。
少なくとも、以前のような大らかさは無くなり、厳しい運用になるでしょう。「相続税」の『物納』を実行するには、覚悟が必要なのです。
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