宅地で評価される市街地山林…評価額が高ければ相続税は物納で!
宅地並み課税の市街地山林と相続税の関係は。相続税の物納財産とすることは可能なのでしょうか。
農地と山林
市街化区域内では、土地の用途によって「相続税」の負担が異なります。
『市街地農地』の場合…〈農業を継続する〉‥など条件はありますが、《納税猶予制度》によって、「相続税」が格安(?)になります。平坦地が多いため、売却も比較的容易です。
一方、『市街地山林』には《納税猶予制度》がありません。傾斜地や山が多いため、売るに売れない土地が多く、悩ましい限りです。
『市街地山林』の相続税評価額は、原則として…〈その山林を宅地とした場合の相続税評価−宅地に転用する場合の通常の造成費〉になります。宅地として評価して、予想造成費を控除するわけです。
宅地価格と造成費等
宅地の評価は…路線価地域の場合は接する路線価で、その他の地域は近隣宅地評価を基準に、計算されます。造成費は、各国税局ごとに定められています。また、開発に伴う道路など、公共・公益施設による《潰れ地》は評価減もできます。
造成費等は各国税局ごとに定められています。
評価と申告
このように算定していくと…『市街地山林』の相続税評価額は、一般的に..実際の売却可能額よりも高くなります。宅地として評価するのは合理的ですが、数字が正しくなければ問題ですね…。
そこで(?)、『市街地山林』の「相続税」を申告するときは…路線価や造成費について、鑑定評価..実際の造成見積額を使用することも可能です。〈国が定めた基準で計算ししなさい!〉‥という、義務ではないのです。
破産危機?
『市街地山林』..実際に買うのは、宅地を造成して分譲するデベロッパーでしょう。事業ですから、採算が取れる買い値を付けます。造成費に始まり…販売広告費・管理費・金利‥に加え、完売できないリスクも考慮して、利益を見積ります。
こうして想定される《採算額》は、『市街地山林』の相続税評価額より、格段と低くなります。また、売却額がどんなに安くても、売れない場合もあります。
このように、相続税評価額は高く換金性は低い土地を多く所有していると、《相続税破産》を招きかねません。以前は…〈『市街地山林』を開墾して納税猶予が可能な『市街地農地』にする〉‥という、相続税対策もありました。(現在、3大都市圏特定市では生産緑地指定が必要ですが。)
物納しよう!
リスク満載の(?)財産である『市街地山林』を相続したら、《物納》を考えるのでしょうか..実際のところ、『市街地山林』の《物納》は多いようです。
〈山林の物納なんてムリ〜〉‥と、思い込んではいませんか?確かに《山林の物納は》、『市街化調整区域』では、原則として不可です。しかし、『市街地山林』は、原則として物納ができるのです。
では、この《原則》とは、何でしょう?…単独での開発が可能な山林であるならば、《物納》ができるということです。
デベロッパーが考える開発では、事業の採算性が重要でした。それに対して、《物納》における開発では、法律や条例に沿った実行の可能性がポイントです。
評価は高く!
実際には…その山林が接している道路が、《物納ポイント》になります。その『市街地山林』が接する道路が、市町村の条例により開発が可能であれば、物納が可能です。その道路が《法律上の道路》ではなく単なる通路であったり、接道がない場合には、《物納》は困難です。
《物納》の条件を満たすように『市街地山林』を整備することが、「相続税」の納税対策になります。当然、地積更正や境界確認等が必要です。《物納》では、相続税評価額は高い方がいいのです。《物納》しないのであれば、評価額は低く抑えたいところですが…。