物納却下財産の実際

相続税物納申請での、管理又は処分をするのに不適当な財産の実際は  

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相続税の物納申請をして却下された財産

厳しい相続税から地主さんを救ったのが相続税の物納制度でした。地価が更に下落しても元の評価額で国が引き取ってくれました。確実なセーフティネットでした。しかしすべての物納が許可されるわけではありません。


 地価下落となると大地主さんは相続破産の危機を迎えます。
 相続税の最高税率は50%です。路線価は公示価格の80%相当ですが、ここでは路線価を時価とし、全財産を更地としましよう。

 税率50%なら相続税納税のため全体の50%の土地を失うことになります。100の資産のうち50を失います。現実には自宅や事業用地は残さないといけないですし、50%を失うのは極めて大変なことです。

 しかし実勢地価が2倍になっているのならば、現実の税率は25%(50%÷2倍)でしかありません。評価額は100・相続税は50、しかし現実の財産額は200です。50は200に対して25%です。つまり最高税率の50%であっても4分の1を失えば相続税を納税できたのです。

 地価急落期に起こることは、評価は100・相続税は50、しかしその現実の財産額が100を割り、更には50に近づくということです。全財産を処分しても相続税が払えなくなります。

 そして昭和バブルの崩壊での「相続税破産」にそれ..実際に経験しました。

 「財界」1993.3.31.号の特集は「破産の時代…恐怖の相続税に泣く日本国民」でした。

 まさにタイトル通りでした。当時を知らない若い世代には信じがたいことですが、この時期に相続となったというだけで、真面目な大地主さんが簡単に破産しました。財産が多いほど簡単に破産していきました。ついには相続税が原因での自殺者までだしました。

 その地主さんを救ったのが物納制度でした。地価が更に下落しても元の評価額で国が引き取ってくれました。確実なセーフティネットがありました。

 それでも土地次第ではきわめて厳しい現実が待っています。条件を満たさない土地については「管理又は処分をするのに不適当」となりました。

 なおその後2006年4月に、物納制度が極めて厳格になりました。測量等の期限が厳しくなり、更に物納の前提となる金銭困難な理由が極めて厳しくなっています。国は物納を受けつけたくないのです。つまり物納に安直に頼れなくなっているのです。

■物納申請財産である貸地は相続税法第42条第2項に規定する「管理又は処分をするのに不適当な財産」に該当するとした事例

 物納申請財産である本件貸地は、当事者間に賃貸借契約書が作成されていないため、賃借人を特定することができないなど、その契約内容が不明確であること、また、本件貸地の一部を不特定多数の者が生活用の道路として使用しており、現に公共の用に供されていると認められることなどから、相続税法第42条第2項に規定する「管理又は処分をするのに不適当な財産」に該当すると認められるので、物納財産変更要求をした原処分は相当である。
昭和63年10月31日国税不服審判所裁決



■物納申請土地は、いわゆる間口狭小のため単独には通常の用途に供することができない土地に該当するとして「管理又は処分をするのに不適当」と判断した事例

 請求人は、本件物納申請土地について、売却可能と判断される価格として相続税法の規定に基づき課税を行う一方、これが売却できる見込みのない不動産であるとして物納を認めないのは不合理である旨主張するが、相続税の課税は、相続による財産の取得という事実につき担税力を認めて行われるものであり、一方、物納財産の適否は、国が物納された財産の管理又は処分により金銭納付があった場合と同等の経済的利益を将来現実に確保することができるかという観点から判断されるのであって、ある相続財産について、それが課税価格計算の基礎となった財産であるからといって、そのことから直ちに当該財産が物納財産として適するということにはならず、管理又は処分をするのに不適当とされることもあり得るというべきである。
 本件物納申請土地は、いわゆる間口狭小であって、建築基準法及び△△県建築安全条例によれば建築物の敷地として適していないことはもちろん、自動車の出入りも困難であることから駐車場への転活用も困難であること、そして、原処分庁は、物納財産の管理官庁である○○財務局との協議の結果、現状のままでは管理又は処分をするのに不適当と判断し、請求人に隣接地主との用地買取り交渉等所要の補完を求めたが、結局、補完できなかったことが認められる。
 したがって、本件物納申請土地は現状のままでは売却できる見込みのない不動産であり、管理又は処分をするのに不適当と判断せざるを得ない。
平成9年4月9日国税不服審判所裁決



■共有土地の持分の一部である財産の物納は、「管理又は処分をするのに不適当」と判断した事例

 本件物納申請財産は、共有持分の一部であり、国において管理又は処分をするのに不適当な財産である。また、原処分庁は、請求人からの却下処分の猶予の要請に基づき、遺産分割の推移を相当期間見守っていたが、なお協議分割が整わない状態が続いたことから、本件却下処分を行ったものであり、請求人が主張するような違法・不当な点はない。
 また、本件却下処分に伴い、請求人の相続税は滞納となったことから、国税通則法第37条第1項の規定に基づき行われた督促処分は適法である。
 なお、物納申請却下処分及び督促処分に対する異議決定の内容を不服とする審査請求は、国税通則法第76条第1号の規定により認められないから、これら審査請求は不適法である。
平成10年5月27日国税不服審判所裁決


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